
北欧の空気感、インテリア、ファッション。
うまくいかないけど続いていく人生。
それら全ては”素敵だな”と思える作品だった
公開20周年ということでリバイバル上映されてる名作
「かもめ食堂」という作品をご存知でしょうか?
わたしはタイトルだけは聞いたことがあったけど、なんだかんだ見ることがなかった作品でして。
今回、公開から20周年を迎えて映画館でリバイバル上映されている。
とのことで、さっそく観に行ってきました。
20年経っても、映画館が満席になる作品ってすごい!
[作品概要]
フィンランドのヘルシンキを舞台に、日本食レストランを営む日本人女性と、そこに集まる人々との穏やかな交流を描いた物語。
[あらすじ]
ヘルシンキの街角で、サチエは「かもめ食堂」という小さな店をオープンします。
看板メニューは彼女が心を込めて握る「おにぎり」。
ある日、ひょんなことからミドリとマサコという二人の日本人女性が店を手伝うことになります。
サチエの焼くシナモンロールの香りに誘われて地元の人々が少しずつ集まり始め、訳ありな人々との交流を通じて食堂は次第に活気を取り戻していく。
作品に登場するキャラクターはどれも個性豊か、というかクセ強な人々が多いですが、それぞれに色々な事情があり、偶然「かもめ食堂」に出会い、交流が出来てくる。
といった感じの平和な日常を描いた作風
作品の特徴
各所に今作品の素晴らしい魅力が詰まっているので、ご紹介。
フィンランドという異国感

全編フィンランドのヘルシンキでロケが行われており、北欧の美しい街並みやインテリアも見どころの一つ。
ヘルシンキという街並みにの美しさはもちろんですが、北欧のライフスタイルそのものが今作品を通して居心地の良い空気感を感じさせてくれます。

「ちょうどいい」距離感
フィンランド人はパーソナルスペースを大切にしますが、困っている人にはそっと手を差し伸べる国民性が綺麗に描かれています。
この絶妙な距離感が国民性らしく、「干渉しすぎないけれど、温かい」と感じられるんですよね。
わたしも大人になるにつれて、このぐらいの距離感で人間関係を維持していきたいなと感じるようになることが増えましたね
光とデザインの調和

作品全般に流れる、北欧特有の柔らかく青みがかった光。

そして、登場する「イッタラ」の食器や「アラビア」のカップ。
アルヴァ・アアルトがデザインしたカフェ(アカデミア書店内のカフェ・アアルト)など、機能的で美しいインテリアが、日常を特別に演出しています。
かもめ食堂のモデル

実際にヘルシンキにある「Ravintola Kamome(旧:カハヴィラ・スオミ)」で撮影されました。
映画の世界観そのままに、今も多くのファンが訪れる聖地となっていました。
食の魅力:心と体を整えるハラゴシラエ

今作の魅力はなんといっても食のシーン。美味しそうに出てくる料理の数々がたまらない
料理は単なる小道具ではなく、言葉の通じない人々を繋ぐ「共通言語」として描かれています。
おにぎりへのこだわり

サチエは「おにぎりは自分で作るより、人に作ってもらった方がおいしい」と語ります。
梅・鮭・おかかという日本の定番具材にこだわるのは、それが彼女の「揺るぎないアイデンティティ」だから。
地元の人々が初めて日本食(おにぎり)を口にし、その温かさに触れるシーンは象徴的でした。
シナモンロールの魔法

店にお客が入らない日々、サチエが焼いたシナモンロールの香りが外へ漂い、地元の女性たちの足を止めさせます。
この「香りの演出」が、食堂に人の体温を呼び込むきっかけとなりました。

フィンランドのシナモンロールは形が少し潰れているので、少し特徴的。
わたしも普段からシナモンロールを焼くのですが、今作品を観てから、次はフィンランド風シナモンロールを焼いてみようと思います

ハラゴシラエして歩くのだ(当作品のキャッチコピー)

この短いキャッチコピーには、作品に流れる人生哲学が凝縮されている気がします
「食べる」ことは「生きる」こと

どんなに寂しくても、
荷物を無くしても、
人生に迷っても、
まずはちゃんとお腹を満たして(ハラゴシラエして)、地に足をつけて一歩を踏み出す。
そんなシンプルで力強いメッセージが作品全体を通して感じられる
「頑張りすぎない」肯定

劇中でサチエは「やりたくないことはやらないことに決めている」と言い切ります。
このセリフには、社会の荒波に立ち向かうような「挑戦」ではなく、
自分の機嫌を自分で取りながら、淡々と歩き続ける「しなやかさ」が込められているなと
今作品は20年前の作品ですが、このメッセージは20年経った今でも色褪せないなと感じます
まさに、わたしが普段の生活で意識していることでもあるな。とハッとさせられるシーンでした
背負ってきた荷物をおろして、自分らしく生きる

今作品は20周年ということでリバイバル上映されるぐらいの人気作品なわけですが、
お客さんの層は40代〜50代の方々が多かったような印象もあります。
思えば、わたしもこの20年で色々なものを背負ったり、体験したり、傷ついたり、病んだり、色々とあったなぁと思い出します
そんな風に感じながら、上映を味わった方も多かったのでは?と
作中でこんな言葉があります。
「どこにいても寂しい人は寂しいし、悲しい人は悲しいんですよ」
「人は変わっていくものですから」
このセリフは色々な経験をしてきた人だからこそ感じ取れるセリフだと思う。
ホント、人生って色々ありますよねぇ

別のシーンになるが、マサコさんが荷物をなくしてしまうエピソードも印象的でした。
ヨーロッパへの旅の途中で荷物がなくなる
「あるある」エピソードとして描かれているのですが、
荷物が行方不明になって戸惑っていた彼女が、
ハンドバッグひとつと
新調したマリメッコのワンピースで軽やかに現れる。
というシーンがある。
その姿が、とても楽しそうで、スッキリした表情が印象的です
抱えてきた荷物を手放すことで、人は軽やかになれる
という表現だったと思う
人生は、気づかないうちに荷物が増えていくもの
経験や責任、
大切な人や思い出、
お気に入りのモノ
生きていると必要なものって不思議と増えていくんですけど、
同時に、動きを鈍くしてしまうような感覚もある
荷物を手放すのは正直いって怖い
でも、手放した先にしかない軽さもあって、
変わらずにいられない。
そんな言葉を、すんなりと受け入れることができたら。
ほんの少しだけ、生きるのが楽になるのかもしれない
おわりに

今作品のラストシーンがまた素晴らしいのである。
ラストシーンは、なんかもうバチっと決まっていて、観た後のスッキリ感と余韻がたまらなく居心地が良い!
エンディングで流れる井上陽水の”クレイジー・ラブ”も最高です。
20周年を経ても色褪せることのない魅力と、これだけ多くの方々に愛される作品に出会えたことに感謝の気持ちすら抱く
ぜひ、30周年、50周年と語り継がれていく名作であってほしい。
そして、いつかわたしもフィンランドに行ってみたいな、
と強く思った



